素因というのは、損害の発生や拡大に影響を及ぼす被害者側の事情のことです。

 

この素因が原因となって損害が拡大した場合には、加害者に損害全部を負担させるのは公平ではないとして、損害賠償額を一定の割合減額するという考え方を素因減額といいます。

 

たとえば、事故前から椎間板ヘルニアなどの既往症があり、それが事故と相まって症状が発生したとか、症状が特に重くなったというような場合、素因減額が認められるというのが実務上の扱いです。

 

一方で、疾患に該当しない身体的特徴については特段の事情がない限り素因減額の対象としないとされています。

 

たとえば、普通の人より首が長いので症状が重くなったというような場合でも素因減額はされないということになります。

 

このような疾患や身体的特徴のほかに、心因的素因というものもあります。

 

心因的素因というのは、被害者の精神的傾向が、被害者の被害の拡大に寄与していると思われる場合のことをいいます。

 

被害者に特異な性格があった、回復に対する自発的意欲がなかった、賠償性神経症(相手方に対する賠償を増額させたいという願望から発症する神経症で、本人に自覚はないものの、過度に痛みなどを感じたり、訴えたりするようになること)、うつ病の既往症などが心因的素因の例といえます。

 

このような心因的素因がある場合、事故のみによって通常発生する程度範囲を超えていて、かつ、その損害の拡大について被害者の心因的素因が寄与している場合には、素因減額を認めるというのが実務の考え方です(最高裁平成4年6月25日判決)。

 

 

以上のとおり、素因には複数の種類がありますが、減額割合について明確な基準や類型があるわけではありません。

 

素因減額が問題となるようなケースでは、ご自身で悩まず、また安易に保険会社の提案を受け入れるのではなく、まずは弁護士に相談されることをおすすめします。