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交通事故

【交通事故】整骨院等の施術費が認められる場合と認められない場合

2021.04.22

1.はじめに

前回の記事で、整骨院などで受けた施術費の全額が必ずしも加害者の賠償すべき治療費として認められるとは限らないということを説明しました。

 

今回は、いくつかの裁判例を紹介しながら、どのようなケースで施術費が認められたのか、あるいは認められなかったのかということを見ていきたいと思います。

※下線は当事務所によるもの

 

 

2.施術費が認められたケース(一部認められたものも含む)

 

①神戸地裁平成18年12月22日判決

原告本人尋問の結果によれば、原告は、A病院を退院した後、A病院の医師と話し合った上、リハビリテーションを受けるために坂口接骨院に通院することにし、B接骨院で運動療法及び電気治療などを受けており、B接骨院で施術を受けたときには原告の症状が軽減したこと、他方、B接骨院に通院中もA病院に通院して診察を受けていたが、同病院でリハビリテーションを受けていなかったことなどの事実を認めることができる。上記の認定事実によれば、原告は、A病院の医師と話し合った上、A病院でリハビリテーションを含む治療を受ける代わりにB接骨院でリハビリテーションを含む治療を受けていたと認められるから、B接骨院での治療も上記の傷害の治療として必要かつ相当なものと認めるべきである。したがって、B接骨院の治療費を本件事故によって原告に生じた損害と認めるのが相当である。

 

②東京地裁平成25年8月29日

①原告は,診療時間が限られているA整形外科医院には,ほとんど週末しか受診することができなかったことから,早期治癒のため,勤務終了後に通院することができる整骨院等に通院することとし,A整形外科医院の担当医師もこれを承知していたこと,②原告が整骨院等で受けていた施術の内容は,A整形外科医院で受けていた消炎鎮痛等処置と概ね同じであり,症状改善に効果的であったことが認められる。以上によれば,B整骨院及びC接骨院における施術は,本件事故後の原告の症状を改善するために必要かつ相当であったということができ,本件事故と相当因果関係があると認められる。

 

③横浜地裁平成29年5月15日判決

整骨院での施術についても,上記事故態様に照らし,全身を打撲した可能性を否定できず,受傷直後は医師の診断を受けていた頚部及び腰部以外の部位に痛み等の症状があったとしても不自然ではなく,これに対する施術が必要であったと推認されること,A病院及びB整形では整骨院に通院中であることを前提として治療が行われていること,症状の改善に従って施術対象が限定され,通院頻度も減少しており(甲13),施術の有効性が推認されることからすれば,治療の必要性・相当性を否定すべきではない。

 

④東京地裁平成29年7月18日判決

原告は本件事故による非器質性精神障害を負い,その治療を受けたものである上,原告がA鍼灸治療室において針治療を受けたのは昭島病院の医師の勧めに基づくものであるから,かかる治療費等も損害として認めるのが相当である。

 

⑤東京地裁平成30年11月30日判決

本件整骨院での施術は,主治医による同意があったとは認められないものの,前記(1)エの施術箇所は,本件整形外科で症状が認められていた部位と矛盾はないこと,原告Eの出張状況(前記(1)オ)から多忙であったと窺われ,勤務先近くの本件整骨院で施術を受けることが便宜であるという事情は首肯できること,施術回数内容が過剰であるとは認められないことから,平成27年8月末までの施術について必要性相当性を認める。

※整骨院への約1年6か月の通院期間のうち、約1年間の施術については必要性・相当性を認めました。

 

⑥東京地裁令和元年8月27日判決

各整骨院の施術費については,施術を受けることについては,Aクリニックの医師も把握していたものの(乙2),医師の指示があったとまでは認められないこと,通院頻度も高いことから,医師が診断した負傷名で施術が行われており,施術に一定程度の効果が認められることを考慮しても,その施術の全てについて相当因果関係を認めることはできず,その75%について相当因果関係を認めるのが相当である。

 

 

3.施術費が認められなかったケース

 

①東京地裁平成16年2月27日判決

原告は、整体院における整体料を請求するので、検討するに、対象疾患に対する治療と疲労回復等のための整体術との境界は明確ではないこと、患者の受傷の内容と程度に関し医学的見地から行う総合的判断は医師しかできないところ、整体術は整形外科の治療法と比較したときに限界があり、整体によりかえって筋組織の硬結を招く問題点もあること、整体においても、整骨院における施術と同様に、施術の手段・方式や成績判定基準が明確ではないため施術の客観的な治療効果の判定が困難であることや施術費算定についても診療報酬算定基準のような明確な基準がないという事情があることを考慮すると、施術の必要性・有効性、施術内容の合理性、施術期間の相当性及び施術費用の相当性の各要件を満たす証拠が認められない本件において、整体料を整形外科病院の治療費と同様に、加害者の負担すべき損害とするのは相当ではない。したがって、原告の請求は認め難い。

 

②大阪高裁平成22年4月27日判決

Bは、本件事故当日、Aとともにb病院を受診し、左肘打撲と診断され、治療としては対症療法をする程度とされ、その翌日にAとともに同病院を受診していないから、Bの上記受傷の程度は軽微なものであったというべきである。したがって、被控訴人が、同月四日にAとともに被控訴人を受診したBについて、左肘関節打撲及び上背部打撲と診断し、同年六月三〇日までに六二日間施術をしたのは、Bの上記受傷の程度に照らし相当な範囲を著しく超える過剰な施術であったといわざるを得ず、これについての施術料が、本件事故と相当因果関係があったと認めることはできない。

 

③神戸地裁平成28年8月24日判決

原告は,知り合いからカイロプラクティックAを紹介され,手で身体全部をほぐし,タオルで頚部を引っ張る治療を受け,徐々に良くなっていく実感があり,1年位で元に戻ってきた感じになった旨供述し,これと同趣旨の陳述書(甲17)がある。しかし,B市民病院及びC整形外科病院の診療録(乙3,4)には,原告が医師に対して整体治療や鍼治療等を受けていたなどと報告した記載はあるものの,これに対する医師の指示や同意があった形跡はない。また,カイロプラクティックAの施術録等はなく,原告がカイロプラクティックAでどのような治療を受け,どのような効果があったかを裏付ける証拠はない。そして,カイロプラクティックAが柔道整復師等の国家資格を有していたことは窺われず,カイロプラクティックAにおける治療は鍼灸院や整骨院における施術であると認めることはできない。以上に照らすと,原告のカイロプラクティックAにおける治療の有効性・相当性を認めることはできず,原告のカイロプラクティックAへの通院と本件事故との相当因果関係を認めることはできない。

 

④金沢地裁平成28年9月15日判決

原告は,上記の期間も腰痛が生じており,平成23年9月4日に健康サロン教室で整体,マッサージ,低周波指導を受け,同年11月7日にサポーターやホッカイロを購入したこと(前記1(5)イ)は,いずれも腰痛のためであると主張・供述する(原告〔3,4頁〕)。しかし,本件事故の翌日にA医療センターを受診した後も腰痛が継続していたのであれば,同センターへの通院を継続していたものと考えられるところ,原告は同日以降,同センターへの通院をしていないのであり(同(5)ア,イ),腰痛が継続していたとは認められない。仮に,いったん腰痛が治まった後に新たに腰痛が生じたのだとしても,医療機関への通院をしていないことからすると深刻な症状であったとは考えにくいし,そのような場合にはそもそも本件事故によって生じた腰痛であるともいい難く,20歳ころに交通事故によって負ったという腰椎圧迫骨折等の後遺症である可能性が否定できない。(中略)健康サロン教室(f),B病院(g)及びC整骨院(h)に関する治療費については,本件事故と相当因果関係のある損害とは認められない。

 

⑤東京地裁平成29年3月29日判決

原告は,平成27年5月1日及び同月12日のマッサージはり灸Aの治療費合計6000円,同年7月14日のB鍼灸接骨院の治療費1210円を請求する。しかし,原告自身の判断で,マッサージ治療に切り替えたもので(原告本人),医師の指示等を認めるに足りる証拠はないし,最初の治療も,本件事故から2か月余り経過し,C整形外科への最後の通院からも1か月半余りが経過しており,本件事故から2か月余り経過して施術の必要性がにわかに発生したとは通常考え難い。したがって,原告の前記請求は理由がない。

 

⑥東京地裁平成29年11月14日判決

スポーツ整体診療所における治療費 0円

本件事故による傷害の治療行為としての必要性・相当性を認めるに足りない。

 

 

4.まとめ

以上は多数ある裁判例のうちの一例にすぎませんが、これらを見ると医師の指示や同意があったかどうかが重要なポイントになっていることが分かります。

 

この点、裁判官の講演録においても「医師が患者に対して整骨院での施術を受けるように指示をしている場合には、資格を有する医師が患者の治療方法の一つとして柔道整復師による施術を積極的に選択したことを意味していますから、特段の事情がない限りは、①施術の必要性、②施術の有効性があることを強くうかがわせる事情になります。」との指摘がなされているところです(吉岡透「整骨院における施術費について」赤い本2018年版下巻27頁以下)。

 

もっとも、医師の指示がない場合でも、施術費が認められたケース⑤⑥の裁判例で紹介したように施術費の一部が認められる場合もあります。

 

反対に、医師の指示があるからといって、無制限にどのような施術でも損害として認められるというわけではありません。

 

交通事故による怪我の治療のために整骨院等での施術を考えておられる場合には、まずは弁護士にご相談されることをおすすめします。

 

 

 

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