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離婚・男女問題

【離婚】調停に代わる審判とはどのような制度?活用法のご紹介

2021.05.24

1.はじめに

前回の記事で、「調停に代わる審判」という言葉が出てきました。

 

令和元年度の司法統計によると、離婚調停の申立て件数は38,501件で、そのうち調停に代わる審判が行われた件数は1,536件です。

 

つまり、離婚調停の申立て件数に占める調停に代わる審判の割合は約4%ということになります。

 

この数値を見ていただくと、それほどよく使われる手続ではないことが分かると思います。

 

もっとも、使い方によっては非常に便利なシステムであり、特にコロナウイルス流行下においては活用が期待されています。

 

では、その内容やどのような場面で使われるのかということをご説明したいと思います。

 

 

2.調停に代わる審判とは

家事事件手続法には次のような規定があります。

 

(調停に代わる審判の対象及び要件)

第二百八十四条 家庭裁判所は、調停が成立しない場合において相当と認めるときは、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、職権で、事件の解決のため必要な審判(以下「調停に代わる審判」という。)をすることができる。ただし、第二百七十七条第一項に規定する事項についての家事調停の手続においては、この限りでない。

2 家事調停の手続が調停委員会で行われている場合において、調停に代わる審判をするときは、家庭裁判所は、その調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴かなければならない。

3 家庭裁判所は、調停に代わる審判において、当事者に対し、子の引渡し又は金銭の支払その他の財産上の給付その他の給付を命ずることができる。

 

このように、当事者双方の衡平を考慮して家庭裁判所(裁判官)が一切の事情を考慮して職権で、事件の解決のために必要な審判をするのが「調停に代わる審判」です。

 

この調停に代わる審判は、「審判」とされていますが、裁判所が紛争を解決するために行う法的な判断(裁判)ではなく、裁判所が審判の形式で解決案を提示するもので、実質的には調停又はその延長のものと考えてよいとされています(秋武憲一『離婚調停』〔第4版〕70頁)。

 

なお、調停に代わる審判は、当事者が審判の告知を受けた日から2週間以内に異議を申し立てると、審判そのものの効力が失われることになります(家事事件手続法286条2項・5項、279条2項)。

 

もっとも、後述のとおり実際は当事者間で合意が整った状態で調停に代わる審判が利用されることが多いため異議が申し立てられることは稀であろうと考えられます。

 

実際、当事務所では多数の離婚事件を取り扱っていますが、令和3年5月現在、調停に代わる審判が出た後に異議が出されたということは一度もありません。

 

 

3.調停に代わる審判が利用される典型例と検討点

前述のとおり、当事務所では常時多数の離婚事件を取り扱っておりますが、ケースによっては調停に代わる審判を活用することがございます。

 

その典型例としては、ご本人が調停に出席することができない場合です。

 

離婚調停の場合、調停成立の際には両当事者が家庭裁判所に出向かなければ調停を成立させることができません。

 

しかし、病気のため外出が困難であるとの理由や遠方に居住しているなどの理由で調停成立の際にご本人が家庭裁判所にどうしても出向くことができないという場合もあります。

 

このような場合にせっかく離婚条件に関する合意ができているにもかかわらず、当事者が家庭裁判所に出向くことができないという理由だけで調停不成立になってしまったのでは非常にもったいないことになってしまいます。

 

そこで、こういった場合には調停に代わる審判ができないかを検討するということになります。

 

具体的には以下の2点を検討することになります。

 

①本当に当事者間で離婚条件の合意ができているのか

 

調停に代わる審判が出た後に「こんな内容では合意していない」なんてことになるとどちらかから異議が出てしまい、それまで話し合った結果が無駄になってしまうおそれがあります。

 

そこで、そのような事態にならないように、弁護士が作成した条項案を両当事者に確認してもらい、間違いなく合意できているかという点を確定させます。

 

②裁判所に出向くことができない理由があるか

 

離婚はご本人にとって人生の大きな岐路であり、後から「こんなはずじゃなかった」とならないためにも、離婚成立の場面には当事者が立ち会われる方が望ましいと考えられます。

 

そうだからこそ、両当事者が裁判所に出向かなければ離婚調停を成立させられないとされているわけです。

 

そのような調停の大原則がある中で、調停に代わる審判は、あくまで例外的に家庭裁判所の職権で行われるものですので、建前上は当事者が自由に利用できるというものではなく、裁判所の判断によって利用されるかどうかが決まるということになります。

 

そのため、裁判所に調停に代わる審判をする必要性があるという判断をしてもらえるだけの理由があるかどうかは検討する必要があります。

 

たとえば、ただ単に裁判所に行くのがめんどくさいなどの理由である場合にまで(そのことを正直に裁判所に伝えたとして)、裁判所の判断で調停に代わる審判をしてくれるのかは何ともいえないところではないでしょうか。

 

 

4.調停に代わる審判を利用するための方法

前述のとおり、調停に代わる審判は裁判所の職権で行われるものですが、通常は当事者(代理人弁護士)から調停に代わる審判をしてほしいと裁判所にお願いすることになります。

 

具体的には、当事者間で合意が整った条項案などを添付したうえで、裁判所に出向くことができない理由と調停に代わる審判を利用したい旨を記載した上申書を出すという流れになるのが一般的かと思います。

 

ちなみに、当事務所で過去に取り扱った調停に代わる審判は例外なく双方に代理人弁護士が付いているケースでした。

 

やはり、調停に代わる審判を利用しようと思えば、調停期日間にも協議を進めて、調停当日までに合意を形成しておく必要があります。

 

つまり、実質的な協議は期日間に済んでいて、調停当日は離婚の成立を待つだけという状態になっている必要があるということです。

 

そうなると、双方に代理人が付いていないと現実的には期日間の協議を行うことが難しく、結果として調停に代わる審判を行うことも困難になるのではないかと思います。

 

また、上記の①に記載したように、当事者が確実に離婚条件に合意しているといえるためには、各当事者が自分の代理人弁護士から条項の意味内容の説明を十分に受け、理解している必要があるということも理由の一つと考えられます。

 

裁判所に出向くことはできないけれども調停を利用したいという方は、離婚事件の経験が豊富な弁護士へのご依頼を検討されてもよいと思います。

 

 

5.コロナ流行下における調停に代わる審判の活用

コロナウイルスが流行している現在、調停に代わる審判に注目が集まっています。

 

女性側で、養育費の支払を確実に受けるために、協議離婚ではなく調停を利用したいと考えているけれど、裁判所に出向くのには抵抗が強いという方もおられます。

 

そういう場合に、調停に代わる審判を利用することを検討してみられるとよいと思います。

 

実際に、当事務所でも上記のような理由で調停に代わる審判をしてもらったということがございます。

 

今後の司法統計では調停に代わる審判の割合がこれまで以上に増えるかもしれませんね。

 

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