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交通事故

【交通事故】過失割合の修正要素の立証責任はどちらにある?

2021.10.18

1.はじめに

今回は主に専門家(弁護士)向けの記事です。

 

交通事故の過失割合を検討する際に、おそらく多くの弁護士がまず初めに見るのは『別冊 判例タイムズ38号』(以下「別冊判タ」といいます。)だと思います。

 

この本には多数の事故類型が掲載されていますので、自分が扱っている交通事故事件がどの類型と一致するかあるいは近いかという観点で調査をしていくというのが一般的です。

 

たとえば、歩行者と四輪車の横断歩道上の事故で、歩行者が黄色信号で横断を開始した(四輪車は赤信号で進入した)というケースであれば、別冊判タの【2】の図が該当することになります。

 

そして、この図を見れば、歩行者の過失割合は10%がベースとなることがわかります。

 

 

2.過失割合が争点になる場合

上記の例で、歩行者と四輪車のいずれもが、事故類型について別冊判タ【2】の図を使うこと及び歩行者の過失割合を10%とすることに異存がなければ特に過失割合は争点にならないでしょう。

 

しかし、歩行者が、「四輪車が脇見運転をしていた」とか「四輪車には時速15㎞以上30㎞未満の速度違反があった」などとして、過失割合の修正を主張し、一方で四輪車側がそのような事情を否定したとすると、事故態様の認識に大きな開きがあるということになり、過失割合が争点になってきます。

 

仮に上記の歩行者の主張が認められれば、四輪車には著しい過失があるということになり、歩行者の過失割合は5%減少することになります。

 

そのため、いずれの主張が認められるかで損害額が変わるため、過失割合の立証責任の所在がどちらにあるのかということは重要になってくるわけです。

 

 

3.過失相殺の立証責任

判例によると、「民法四一八条による過失相殺は、債務者の主張がなくても、裁判所が職権ですることができるが、債権者に過失があつた事実は、債務者において立証責任を負うものと解すべきである。」としています(最高裁昭和43年12月24日判決)。

 

そして、不法行為における過失相殺についても、被害者の過失の立証責任が原則的に加害者側(被告)にあることに異論はないとされています(『交通関係訴訟の実務』306頁)。

 

そこで、被害者にも過失があるとして、過失相殺の主張立証自体を行うのは加害者側(被告)ということになります。

 

なお、過失相殺に弁論主義の適用があるのかという論点についてはここでは立ち入らないことにします。

 

 

4.過失割合の修正要素の立証責任

では、過失割合の修正要素の立証責任についてはどのように考えればいいのでしょうか。

 

先ほどの例でいうと、四輪車に著しい過失があったということについて、著しい過失が「あった」ことを基礎づける事実を歩行者側が立証しなければならないのか、著しい過失が「なかった」ことを基礎づける事実を四輪車側が立証しなければならないのかという議論ということになります。

 

過失相殺自体を基礎づける事実自体は被告側が主張立証しないといけないとしても、修正要素、中でも被告に不利な修正要素となると、果たして被告に主張立証責任があるといえるのか?などと疑問が出てくるところです。

 

この点について、ある文献を見てみると「修正要素とは、公平性の観点から、基本過失相殺率・過失割合の値を修正すべき個別具体的な事情のことをいいます。例えば、歩行者と四輪車・単車との事故については、被害者(歩行者)が幼児・児童・高齢者である場合や加害者に居眠り運転・無免許運転等の重過失が認められる場合には、過失相殺率は減算修正されます。(中略)そこで、修正要素を基礎づける事情について具体的に主張・立証する必要があります。」との記載がありますが(『事例にみる交通事故損害主張のポイント』294頁)、残念ながら具体的に被害者側と加害者側のどちらに立証責任があるのかが明示されていません。

 

そこで、別の文献に目を通すと、「通常、加算修正事由については加害者側、減算修正事由については被害者側が主張・立証責任を負うものとして取り扱われる。」との記載があります(『交通賠償のチェックポイント』229頁)。

 

また、その他の文献も見てみると「特段の事情の立証がない限り、事故類型に対応する基本の過失相殺率を適用し、これを修正すべき諸事情は、それぞれが自己に有利に働く当事者において立証の必要性を負担するような様相を示す。」との記載があります(『交通関係訴訟の実務』307-308頁)。

 

ということで、過失割合の修正要素は、その修正要素によって有利になる側が、基本的には主張立証責任を負うという理解で差し支えないといえるでしょう。

 

そのため、冒頭の例でいうと、「四輪車が脇見運転をしていた」とか「四輪車には時速15㎞以上30㎞未満の速度違反があった」というような事情(四輪車の著しい過失を基礎づける事情)は、歩行者側が主張立証しなければならないということになります。

 

 

 

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