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交通事故

【大阪の交通事故弁護士が教える】人身傷害保険を利用した場合の過失相殺と損益相殺(既払金)の順序

2022.03.28

1.はじめに

人身傷害保険とは、保険加入自身や同乗者の治療費、休業損害等を負担してくれる保険のことをいいます。

 

つまり、自分が加入している保険を利用して、自分が受けた損害の補償を受けることができる保険というわけです。

 

人身傷害保険に加入している場合、事故の相手方が加入している任意保険と自分自身が加入している人身傷害保険の両方を利用するというケースがよくあります。

 

今回は、人身傷害保険を利用した場合に問題となる、過失相殺と損益相殺の順序について解説したいと思います。

 

 

2.解説

Aさんが自動車を運転していた際に、Bさんの運転する車と衝突し、Aさんは怪我をしました。

 

過失割合はAさん:Bさん=30:70で、Aさんの損害の総額は500万円でした。

 

つまり、Aさんの過失割合部分は150万円(500万円×30%)で、Bさんの加入する保険会社(以下「B保険会社」といいます。)に対して請求できるのは350万円(500万円×70%)ということになります。

 

 

①人身傷害保険の利用がない場合

すでにAさんはB保険会社から既払金180万円を受けていたとします。

 

すると、人身傷害保険の利用がない、いわば通常の事例の場合は、今後AさんがB保険会社から受け取る金額は、以下の計算式のとおり、170万円ということになります。

 

(計算式)

500万円×70%(過失相殺)-既払金180万円(損益相殺)=170万円

 

つまり、通常の事例の場合は過失相殺をした後に損益相殺を行うという計算をするというわけです。

 

そして、トータルでAさんはB保険会社から350万円(既払金180万円+その後にB保険会社から支払われた170万円)の支払いを受けたということになります。

 

 

②人身傷害保険が利用できる場合

では、人身傷害保険が利用できる場合はどうでしょうか。

 

上記と同様の事例で、人身傷害保険の保険会社(以下「A保険会社」といいます。)から治療費180万円がすでに支払われていたとします。

 

仮に、上記①と同じ計算方法をとるとすれば、AさんがB保険会社から受け取ることができる金額は170万円ということになりそうです。

 

しかし、それではAさんが受け取ることができた総額は結局350万円(人身傷害保険から180万円+B保険会社から170万円)ということになるので、人身傷害保険に加入しているか否かにかかわらず、受け取ることができる総額に違いがないということになり、人身傷害保険に加入しているメリットがないようにも思います。

 

この点については、かつては実務上の見解の争いがありましたが、最高裁判例(平成24年2月20日)が出されたことで、現在においては人身傷害保険からの既払金がある場合には、まず優先的に当事者の過失割合部分に充当さるという処理がなされるということで見解が統一されることとなりました(この見解のことを「訴訟基準差額説」といいます)。

 

上記の例でいうと、まずA保険会社の人身傷害保険からの既払金180万円は、Aさんの過失割合部分150万円に充当され、残り30万円はB保険会社に対して本来請求すべき350万円に充当されることになります。

 

そして、Aさんは残る320万円(350万円-30万円)をB保険会社に請求すれば、最終的には損害額500万円全額を受領することができるという形になります。

 

このように、人身傷害保険を利用できる場合には、利用できない場合に比べてより多くの賠償額を得ることができることがあるというわけです。

 

 

3.最高裁判例をどう読み解いたらいいの?

ここからは弁護士向けの解説です。

 

上記では、「人身傷害保険からの既払金がある場合には、まず優先的に当事者の過失割合部分に充当さるという処理がなされる」とさらっと書きましたが、最高裁平成24年2月20日判決は人身傷害保険に基づき保険金を支払った保険会社による損害賠償請求権の代位取得の範囲等が争われた事案です。

 

そうすると、上記最高裁判決の判示内容からどういうロジックで「人身傷害保険からの既払金がある場合には、まず優先的に当事者の過失割合部分に充当さるという処理がなされる」という帰結が導かれるのかという点が気になるところです。

 

そこで、判示内容を見てみることにしましょう。

 

ポイントになる判示は以下の部分です。

 

上記保険金を支払った訴外保険会社は,保険金請求権者に裁判基準損害額に相当する額が確保されるように,上記保険金の額と被害者の加害者に対する過失相殺後の損害賠償請求権の額との合計額が裁判基準損害額を上回る場合に限り,その上回る部分に相当する額の範囲で保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得すると解するのが相当である。

 

これだけを読んでも何を言っているのかよくわからないので、これを先ほどの例にあてはめて読んでみましょう。

 

A保険会社は,Aさんに裁判基準損害額に相当する額が確保されるように,上記保険金の額(180万円)とAさんのBさんに対する過失相殺後の損害賠償請求権の額(350万円)との合計額(530万円)が裁判基準損害額(500万円)を上回る場合に限り,その上回る部分(30万円)に相当する額の範囲でAさんのBさんに対する損害賠償請求権を代位取得すると解するのが相当である。

 

これでだいぶ読みやすくなったのではないでしょうか。

 

つまり、この判例は、人身傷害保険の保険会社より支払われた保険金は、損害額のうち、被害者の過失割合に相当する部分にまず充当され、残額が加害者の過失割合に相当する部分に充当されると考えているという風に読み取れるというわけです。

 

ここで、より理解を深めるべく、原審の取った見解も見てみることにしましょう。

 

原審は絶対説と呼ばれる見解、すなわち、人身傷害保険の保険会社は支払った人身傷害保険金額全額に相当する損害賠償請求権を代位取得するという見解をとっていました。

 

つまり、原審の考え方を前提にすると、A保険会社は180万円全額についてAさんの持っていた損害賠償請求権を代位取得するということになるわけです。

 

「代位取得」と言う以上、もともとAさんがB(B保険会社)に対して持っていた損害賠償請求権を代わりに取得にするということですね。

 

つまり、絶対説は、AさんがB(B保険会社)に対して持っていた350万円の損害賠償請求権のうち180万円が代位取得の対象になると考えているということになります。

 

そして、結局180万円はA保険会社がAさんに代位してB(B保険会社)に請求(回収)するわけなので、人身傷害保険によって賄われたというよりは、B保険会社が支払ったのと変わらない結果となるわけです。

 

したがって、絶対説によると、結局Aさんは人身傷害保険を利用したものの、最終的に受け取ることができる金額は、上記①の人身傷害保険を利用しない場合と同様の350万円(A保険会社から180万円+B保険会社から170万円)ということになります(そして、A保険会社は180万円をB(B保険会社)に対して代位請求するという格好になります)。

 

これに対して最高裁のとった訴訟基準差額説は、A保険会社がAさんの損害賠償請求権を代位取得するのは30万円だけとされるので、反対に言うとAさんの過失割合部分150万円は、人身傷害保険によって全額賄われるという形になるのです。

 

つまり、最高裁の結論の方がより被害者に有利な考え方ということがいえますね。

 

 

 

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