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離婚・男女問題

【離婚】有責配偶者は財産分与を請求することができるか?

2021.04.30

1.はじめに

これまで数回にわたって有責配偶者からの離婚請求は原則として認められないということを説明してきました。

 

では、有責配偶者は財産分与の請求をすることもできないのでしょうか?

 

たとえば、ある夫婦の妻が不倫をしたとします(婚姻関係は破綻していないものとします)。

 

この場合、原則としてこの妻は有責配偶者ということになります。

 

夫は、この妻の不倫を理由に離婚を決意し、妻に対して離婚を求めました。

 

離婚協議の中で、妻が夫に対して「離婚するなら財産分与はきちんとしてほしい」と言ったところ、夫は「不倫をしておいて財産分与を求めるなんて許されない」と反論しました。

 

有責配偶者である妻は財産分与を求めることができるのでしょうか?

 

 

2.清算的財産分与の場合

夫婦が婚姻期間中に形成した財産を清算することを清算的財産分与といいます。

 

たとえば、ある夫婦が結婚後に1000万円の財産を築いたとして、これを500万円ずつ分けましょうというのが清算的財産分与です。

 

単に「財産分与」という言葉を用いるときには、この清算的財産分与のことを意味することが通常だと思います。

 

では、有責配偶者は清算的財産分与の請求をすることができるのでしょうか?

 

この点が問題となった裁判例を見てみましょう。

 

【東京高裁平成3年7月16日】

いわゆる夫婦財産の清算的な性格を有する財産分与は有責配偶者であっても、これを請求し得ると解すべきであるから、右事実からすると、被控訴人は、離婚に際し、控訴人に対して財産分与として七〇〇万円を給付すべきものというべきである。

 

➢有責配偶者からの清算的財産分与請求を認めました。

 

 

このように清算的財産分与の場合、有責配偶者であったとしても財産分与を求めることができると考えられています。

 

そして、解説書においても「清算的財産分与に関しては、有責配偶者といえども認められる旨の判断については、異論のないところであろう」とされており(判例タイムズ795号239頁)、この結論については実務的に特段争いがないと言って差し支えないかと思います。

 

 

3.扶養的財産分与の場合

離婚後における相手方の生計の維持を目的とする財産分与のことを扶養的財産分与といいます。

 

この扶養的財産分与は、そもそも簡単に認められるものではなく、これが認められるのは経済的に自立して生活することが困難な場合に限られると考えられています。

 

そのため、扶養的財産分与については、問題になること自体がそれほど多くはありませんが、有責配偶者から扶養的財産分与を請求することに対しては否定的な見解が多数とされています。

 

裁判例(岐阜家裁昭和57年9月14日審判)においても、次のとおり有責配偶者からの扶養的財産分与の請求は認められませんでした。

 

申立人は、相手方との生活に見切りをつけ他男と共に出奔することによつて内縁関係を解消したものであるから、離婚慰藉料的財産分与や離婚後扶養的財産分与を求めることは信義則上許されないものと解される

 

 

4.まとめ

以上のとおり、有責配偶者であっても財産分与(清算的財産分与)を求めること自体は認められています。

 

有責配偶者は何も請求することができないという誤解をしておられる方もおられるようですが、そのようなことはありません。

 

次回は有責配偶者と婚姻費用というテーマで解説をしてみたいと思います。

 

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