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交通事故

【大阪の交通事故弁護士が教える】被害者に後遺障害が残った場合に、近親者にも慰謝料が認められるか?慰謝料額はどのくらい?

2024.09.18

1.はじめに

交通事故によって後遺障害を負った場合、その被害者には後遺障害慰謝料が認められます。

 

後遺障害等級に応じた慰謝料の基準額は以下のとおりです(赤い本基準)。

・1級:2800万円
・2級:2370万円
・3級:1990万円
・4級:1670万円
・5級:1400万円
・6級:1180万円
・7級:1000万円
・8級:830万円
・9級:690万円
・10級:550万円
・11級:420万円
・12級:290万円
・13級:180万円
・14級:110万円

 

このように、後遺障害を負った被害者本人に対して慰謝料が認められるのは、いわば当然ともいえますが、被害者が後遺障害を負ったことで、その家族(近親者)も精神的苦痛を受けることが少なくありません。

 

では、被害者の家族は、その精神的苦痛を慰謝料という形で加害者に請求することはできるのでしょうか。

 


2.近親者の慰謝料請求が認められる場合

近親者の慰謝料請求については、民法711条に規定があります。

 

他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。

 

この規定によれば、被害者が死亡した場合に限り、近親者の慰謝料請求が認められるように思われます。

 

しかし、最高裁は、次のとおり、被害者が死亡した場合でなくとも、近親者の慰謝料請求が認められる余地があることを示しました。

 

死亡の場合でなくとも、死亡に比肩するような精神的苦痛を受けた場合には、近親者にも慰謝料請求が認められる。

(最判昭和33年8月5日民集12巻12号1901頁)

 

このように、被害者が死亡した場合に並ぶほどの精神的苦痛を近親者が受けたときは、近親者自身の慰謝料が認められることになりますが、一般に被害者に重度の後遺障害が残った場合に近親者にも別途慰謝料請求権が認められると考えられています(2024年版・赤い本(上巻)234頁)。

 

具体的には、後遺障害等級1級~3級の事案であれば、基本的に近親者の慰謝料請求が認められ、後遺障害等級4級以下の事案については「当該行為障害により近親者がいかなる苦痛(特に介護の負担や生活の変化)を受けるかにより個別に判断されている。」と説明する文献があります(『交通賠償のチェックポイント』弘文堂146頁)。

 

その他の文献では、「実務では、被害者の後遺障害等級が高いものについては認められる傾向にあり、1級又は2級の場合は通常肯定、3級事案でも工程が多くみられ、4級以下では事案に応じて肯定事例、否定事例が存在しています。」と説明するものもあります(『事例にみる交通事故損害主張のポイント』新日本法規234頁)。

 


3.近親者の慰謝料の額はどのくらいになるか?

近親者自身の慰謝料が認められるとして、その額はどの程度になるのでしょうか。

 

この点に関しては、一定の目安はなく、裁判官の個別判断に任されているものの、後遺障害等級1級の事案においては、被害者本人の後遺障害慰謝料額の5~20%程度が多く、30%以上はなかなか認定されないと説明されています(2016年版赤い本(下巻)102-104頁)。

 

後遺障害等級1級の後遺障害慰謝料の基準額は、前述のとおり2800万円ですから、その5%であれば140万円、20%であれば560万円ということになります。

 

また、後遺障害等級2級の事案については、「1級の事案ほど近親者固有分が当然のように認定されているわけではないが、認定される場合には、200万円~300万円、あるいはその水準を超える慰謝料額の積み上げがなされているという印象である」とされています(同上104頁)。

 


4.慰謝料請求が認められる「近親者」とはどのような人を指すのか?

ここまで「近親者」の慰謝料請求という言葉を使ってきましたが、この「近親者」というのは、被害者とどのような関係のある人を指すのでしょうか。

 

この点、前述した民法711条には「被害者の父母、配偶者及び子」と規定されていますが、最高裁は次のように判示して、必ずしもこれらの者に限定しないことを明らかにしました。

 

不法行為による生命侵害があつた場合、被害者の父母、配偶者及び子が加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうることは、民法七一一条が明文をもつて認めるところであるが、右規定はこれを限定的に解すべきものでなく、文言上同条に該当しない者であつても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうるものと解するのが、相当である。
(最判昭和49年12月17日民集28巻10号2040頁)

 

つまり、被害者の父母、配偶者及び子と実質的に同視し得る身分関係があり、甚大な精神的苦痛を受けた者については、固有の慰謝料請求が認められるということになります。

 

実際の裁判例に目を向けると、以下のとおり、「被害者の父母、配偶者及び子」以外の身分関係のある人についても、固有の慰謝料が認められているものがあることがわかります。

 

・胸髄損傷による両下肢麻痺等(後遺障害1級)の会社員男性が被害者となった事案において、法律上の母ではないが、将来にわたって介護にあたることとなる事実上の母に、250万円の慰謝料を認めた事例(仙台地判平成23年9月9日自保ジ1870号11頁)

 

・遷延性意識障害(後遺障害等級1級)の中学生が被害者となった事案において、被害者の姉と兄に各200万円の慰謝料を認めた事例(神戸地伊丹支判平成30年11月27日自保ジ2039号1頁)

 

・被害者である中学生が死亡した事案において、被害者と同居していた、被害者の父母、祖父母、姉2人、妹にそれぞれ固有の慰謝料を認めた事例(宇都宮地判平成23年3月30日判時2115号83頁)。※認容額は父母が各250万円(計500万円)、祖父母、姉2人、妹が各120万円(合計600万円)であった。

 

・被害者が頚髄損傷等(後遺障害等級1級)を負った事案において、将来被害者の介護にあたる予定の弟に300万円の固有の慰謝料を認めた事例(名古屋地判平成24年10月26日交民45巻5号1314頁)

 


5.まとめ

以上のとおり、被害者が死亡した事案だけでなく、被害者が後遺障害(特に重度の後遺障害)を負った事案においても、近親者に固有の慰謝料が認められることがあります。

 

そして、固有の慰謝料が認容される場合、その額は決して小さいものとはいえません。

 

したがって、被害者が重度の後遺障害を負ったような場合には、この近親者固有の慰謝料請求を請求対象から漏らすことのないように注意が必要です。

 

 

 

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