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交通事故
【交通事故】交通事故に関する基準時まとめ/事故前年?事故の年?症状固定の年?
1.はじめに
交通事故事件において、損害額を算出するときに、いつの時点の収入が基準になるんだろう?とか、いつの時点の年齢を基準に考えるんだろう?という疑問をもたれる方もおられると思います。
弁護士でも時には「事故前年?事故の年?いや症状固定時?」などと混乱することもありえるところです。
交通事故に関して基準時を考えないといけない項目がいくつかあるので、今回はこのテーマについて解説してみたいと思います。
2.休業損害における基礎収入の基準時
休業損害を計算するうえで、当然のことながら計算の基礎となる収入額を決める必要があります。
では、この収入はいつの時点の収入を基準とするのでしょうか?
この点について、以下にまとめてみることにします。
ただし、いずれもあくまで原則的な考え方や実務的に多い考え方であって、絶対的なものではありませんので、その点はご容赦ください。
①給与所得者 | 事故前3か月の平均給与 |
②事業所得者(個人事業主) | 事故前年の申告所得額 |
③家事従事者(専業主婦) | 事故時の賃金センサス(※注1 参照) |
④未就労年少者 | 原則として休業損害は認められない。 |
※注1
実務書において「家事専業者については、原則として、事故の発生した年の賃金センサスの女性の学歴計・全年齢平均賃金を採用する。」とあります(『交通損害関係訴訟【補訂版】』142頁)。
また、他の文献でも「平均賃金も変動するものであり、いつの賃金センサスを用いるべきかが争われることもあるところ、休業期間が複数年に及ぶ事案(現実の休業日の属する年の賃金センサスを用いる方が、より正確ないし蓋然性の高い数額を算定する観点には適う)においても、理屈はともかく、通常、事故時のものが用いられている。」と記載されているものもあります(『交通賠償のチェックポイント』96頁)。
ただし、賠償請求の時点で事故の年の賃金センサスがいまだ公表されていないような場合には事故前年の賃金センサスによるほかないと考えられます(通常、金額に大きな差はありません)。
3.後遺障害の逸失利益算定における基礎収入の基準時
後遺障害の逸失利益算定においても、休業損害と同様に基礎収入を決める必要があります。
基本的な考え方は休業損害と同じですが、こちらも以下にまとめてみることにします。
①給与所得者 | 事故前年の収入(※注2 参照) |
②事業所得者(個人事業主) | 事故前年の申告所得額 |
③家事従事者(専業主婦) | 症状固定の年の賃金センサス(※注3 参照) |
④未就労年少者 | 症状固定の年の賃金センサス(※注4 参照) |
※注2
事故時おおむね30歳未満の若年者で将来的に生涯を通じて全年齢平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められる場合において、事故前の現実収入の金額が全年齢平均賃金よりも低額のケースは、諸要素を考慮したうえで、全年齢平均の賃金センサスをもって基礎収入とするとされています。
この場合には、原則として症状固定の年の賃金センサスが用いられるとされています(判例タイムズ第1014号61頁(三庁共同提言))
※注3
上記※注2と同様に、三庁共同提言において、原則として、症状固定の年の賃金センサスを用いるとされています。
「通常、休業損害については事故時、逸失利益については症状固定時・死亡時の年の数値が用いられます。」と指摘する文献もあるところです(『事例にみる交通事故損害主張のポイント』113頁)。
※注4
上記※注2と同様に、三庁共同提言において、原則として、症状固定の年の賃金センサスを用いるとされています。
なお、「症状固定時のものを用いる裁判例が多いが、事故時のものや最新(事実審口頭弁論終結時)のものを用いた例もある。」と指摘する文献もあります(『交通賠償のチェックポイント』115頁)。
4.後遺障害逸失利益における労働能力喪失期間の始期
労働能力喪失期間の始期は、症状固定日とされ、未就労者の場合には原則18歳(大学卒業を前提とする場合は大学卒業時)とされています(〔補訂版〕交通事故事件処理マニュアル117頁)。
「事故日」ではありませんのでくれぐれも間違えないようにしたいところです。
5.まとめ
以上見てきたとおり、①事故前年、②事故時、③症状固定時の3つの基準時が存在することが分かります。
基礎収入の算定にあたっては、基本的には事故前を基準として、賃金センサスが問題となるときだけ事故時or症状固定時を基準とすると認識しておけばよいのではないかと思います。
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