ご予約はこちら
BLOG

離婚・男女問題

【大阪の離婚弁護士が教える】別居中に妻が夫名義の車を運転して事故を起こした場合、夫も責任を負うか

2023.08.29

1.はじめに

今回は離婚と交通事故という二つの分野にまたがるテーマについて解説してみたいと思います。

 

 

実務上、夫婦が別居しており、離婚協議中あるいは離婚調停中という状況下においても、妻が夫名義の車を利用しているということがあります。

 

 

この場合、妻が交通事故を起こすと、夫も責任を負うことになるのかということについて見ていきたいと思います。

 

 

※以下では、夫名義の車を妻が運転したケースを想定して解説をしていますが、妻名義の車を夫が運転したというケースでは、「夫」と「妻」の表記は入れ替わりますので、その点ご注意ください。

 

 

2.夫の運行供用者責任

たとえば、別居後も妻が夫名義の車を使用している状況下で、妻が人身事故を起こしたとします。

 

この場合、事故の被害者は、通常は、車を運転していた妻に対して損害賠償請求を行うことになりますが、それだけではなく車の所有者である夫に対しても損害賠償請求ができるのでしょうか。

 

夫からすれば、妻とは離婚を前提に別居をしていることから、妻が起こした事故によって自分が責任を負うことには納得できないという思いを抱いてもおかしくありません。

 

しかし、夫は運行供用者責任(自賠法3条)を負う可能性があり、そうなると事故の被害者は夫にも損害賠償請求をすることができるということになります。

 

つまり、妻が起こした事故であっても、車の所有者である夫はその事故の責任を負う可能性があるということになります。

 

 

3.夫が責任を回避できる場合はあるか

運行供用者責任が問題となる類型としては、①泥棒運転、②無承諾運転、③詐取的な利用・所有者等の意思に反して借り受け人が返還しない場合、④名義残りの場合などがあるといわれています(以下、参考文献として、藤村和夫ほか編著『実務交通事故訴訟体系 第2巻』41頁~45頁)。

 

① 泥棒運転

盗難にあった車が、所有者等使用権者の意思に基づかない運行によって人身事故を起こした場合には、一般的には所有者等使用権者は運行供用者責任は負わないとされます。

 

しかし、実務上は、所有者等使用権者の管理に過失がある場合には、事故発生が盗難直後の比較的短時間内であり、盗難前にあった場所とそれほど離れていない場合には、所有者等使用権者の運行供用者責任が肯定される場合があります(※こちらの記事もご参照ください)。

 

別居中に妻が夫名義の車を盗難したという事例は想定し難く、仮に夫が妻に車を盗難されたと主張したとしても、両者には夫婦という人的関係があることから、この類型によって運行供用者責任が否定されることは困難といえそうです。

 

 

② 無承諾運転

所有者等使用権者と親族関係・雇用関係等の密接な関係がある当事者が、無断で運転した場合には、所有者等使用権者が当該運転行為を承諾していない場合でも、所有者等使用権者の運行供用者責任は肯定される傾向にあります。

 

したがって、夫の承諾を得ることなく、妻が勝手に運転したという場合であっても、夫に運行供用者責任が認められるということになりそうです。

 

 

③ 詐取的な利用・所有者等の意思に反して借受人が返還しない場合

前述した参考文献には次のような記載があります。

 

すぐ返すからと言って借り出した自動車を、返還請求しても借主が言を左右にして返還しない場合、あるいは、レンタカーを借りた者が返還期限を過ぎてもなかなか返さず、連絡もできない状態になってしまう場合、貸主の運行供用者責任が否定されるのは難しいであろう。しかし、当初は任意に引き渡したものの、所有者等の意思に反して返還しようとしない態度が明白になった状態では、所有権等使用権者の立場は無視され奪われたに等しいから、自分の目的のために使っている状態は消滅したとすべき場合もあると思われる。ただ、このような状態だと評価されるためには、引渡し後ないしは返還期限から相当期間経過していることが必要であろう。また、所有者等使用権者が、当該自動車の返還要求を明確な形で行い、借りた側がその意向を無視していることが明らかな状態になっている必要がある。そこまでの心証がとれない状態の場合は、所有者等使用権者の運行供用者としての立場が消滅しているとはできないと考えるべきである。

 

 

この説明を前提にすると、夫が妻に対して、車の返還を明確に求めているにもかかわらず、妻が相当期間返還に応じないというような場合には、夫は運行供用者責任を免れる可能性があるかもしれません。

 

 

④ 名義残りの場合

自動車を他の者に譲渡したものの、自動車登録上の所有名義の変更手続をとっていない場合(いわゆる「名義残り」)における形式的所有名義人については、運行供用者ではないとされるのが、判例の傾向であって、代金が未払いのまま曖昧な利用関係が継続しているなど売買当事者間に特別な関係がある場合には例外的に旧所有者の責任が肯定されるといわれています。

 

そうすると、すでに夫婦間で夫名義の車を妻に譲渡するという合意ができているものの、名義変更の手続きがなされていないにすぎない状態の場合であれば、夫の運行供用者責任が否定される可能性がありそうです。

 

 

4.できる限り早めの名義変更を

以上のとおり、夫が運行供用者責任を回避できるケースは限定的であろうと思われます。

 

実際、全く面識のない者が運転して起こした事故であっても、車の所有者が運行供用者責任を負うとした事例もあり(最判平成20年9月12日判タ1280・110)、運行供用者責任は比較的広く認められています。

 

仮に離婚協議中・離婚協議中に妻が夫名義の車で事故を起こしたことで、夫も責任を負うとなれば、当事者間の紛争は激化・長期化することにもなりかねません。

 

そこで、万が一の事故に備えて、もし離婚後も妻が車を使用することで合意ができているのであれば、離婚を待たずに車の名義変更等を行い、車に関しては財産分与を先行して処理してしまうという方法も検討の余地があります。

 

この場合、自動車保険も夫が契約者となっていることが多いと思われますので、自動車保険の名義変更もあわせて検討してみてください。

 

 

☆弁護士法人千里みなみ法律事務所では、離婚、相続、交通事故、債務整理、その他一般民事など幅広い分野についてご相談・ご依頼を多数お受けしております。

多数の解決実績やノウハウを生かして適切なアドバイスを行いますので、お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせフォームまたはお電話よりご予約いただきますようお願いいたします。

吹田市、池田市、豊中市、大阪市、箕面市、川西市、摂津市、高槻市、茨木市、伊丹市、宝塚市、その他関西圏の都市にお住まいの方々からご利用いただいております。