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離婚・男女問題
【大阪の離婚弁護士が教える】再婚する時の子どもの姓(苗字)と養子縁組。子どもの苗字を変えたくない場合はどうする?【全パターン解説】
1.はじめに
再婚する際に、子どもと再婚相手が養子縁組をするかどうか、また、子どもの姓(苗字)をどうするかという問題に頭を悩ませるケースは少なくありません。
以下では、母が子ども(未成年・独身)の親権者となっている状況において、当該母親が再婚し、再婚相手の戸籍に入籍する(母は再婚相手の姓を名乗る)という典型ケースを想定した上で、子どもも再婚相手と同じ姓を名乗る場合と子どもは現在の姓を名乗り続ける場合に分けて、解説していくこととします。
2.子を再婚相手と同じ姓(苗字)にする場合
① 養子縁組をする場合
子どもと再婚相手が養子縁組をする場合、子どもは養親の姓を名乗ることになります(民法810条本文)。
そして、子どもは養親の戸籍に入ります(戸籍法18条3項)。
結果的に、母、子、養父のいずれもが同一の戸籍に入り、同一の姓を名乗る形になります。
② 養子縁組をしない場合
母が再婚相手の戸籍に入籍し、再婚相手の姓を名乗る場合であっても、養子縁組をしないのであれば、自動的に子どもが再婚相手の姓になるわけではありません。
もっとも、養子縁組はしないものの、母と子の姓が違うことは避けたいということで、母と同じ姓にしたいと考える方もおられます。
そのような場合、子どもと再婚相手が養子縁組をすることなく、子どもが再婚相手の姓を名乗ることが可能です。
具体的には、家庭裁判所で子の氏の変更許可を受けて(※この点については、最後に専門家向けの解説をしています)、役所に入籍届を出すことになります。
これによって、母、子、再婚相手は同一の戸籍に入り、同一の姓を名乗ることが可能になります(ただし、①と異なり養子縁組をしていないため、子と母の再婚相手との間に法律上の親子関係は生じません)。
3.子が姓(苗字)を変えない場合
親が再婚したとしても、子どもは姓を変えたくないという場合もあります。
この場合、以下のような方法をとれば、子どもは現在の姓を名乗り続けることが可能となります。
① 子のみ現在の戸籍に残る場合
再婚する前の戸籍は、母を筆頭者として、その戸籍に子どもが入っているという形になっているはずです。
母が再婚し、母が再婚相手の戸籍に入籍することによって、上記の従前戸籍は、筆頭者である母が除籍になった状態となります。
そして、このままにしておけば、子どもは筆頭者が除籍された戸籍に残り続けるため、子どもの姓は変わらないことになります。
なお、この場合は母親と子どもの姓が異なる形(親子で苗字が違うという状態)になりますので、その点は注意が必要です。
また、このパターンの場合は、子どもと再婚相手は養子縁組をしていませんので、子どもと再婚相手との間に法律上の親子関係はありません。
ちなみに、冒頭に挙げたとおり、ここでの解説は、子どもが未成年のケースを想定していますが、子どもが成人しているケースであれば、子どもだけが残された状態の従前戸籍から、子どもが分籍して、子ども単独の新戸籍を編製することも可能です。
②再婚相手を母の戸籍に入れる場合
ここまでの説明は、母が再婚相手の戸籍に入籍するというケースを想定してきましたが、そうではなくて、再婚相手が母を筆頭者とする戸籍に入籍するという場合であれば、子どもの姓は変わりません(姓が変わるのは再婚相手です)。
子どもの姓を変えたくなく、かつ上記①のように親子(母子)で姓が異なるということを避けたいという場合に、再婚相手の了承が得られるようであれば、このような方法をとることを検討されてもよいと思います。
4.再婚相手と子が養子縁組することなく、再婚相手の戸籍に子を入籍させる際に家庭裁判所の許可が必要か
上記2②のパターンの場合、すなわち、再婚相手と子どもが養子縁組はしないけれども、再婚相手の戸籍に子どもを入籍させる場合に、子の氏の変更手続にあたって家庭裁判所の許可が必要かという点が問題となります。
この点について、「再婚相手と養子縁組をしない子どもの戸籍 離婚により子どもを引き取った母が再婚して、再婚相手の氏を称している場合(民法750条)でも、連れ子の氏は当然には影響を受けません。この場合、子どもの氏と母の氏が異なることになりますから、子どもの氏を母の氏に変更するには、民法791条2項により子の氏の変更手続(入籍の届出、戸籍法98条1項)をしなければなりません。この場合は家庭裁判所の許可は不要です。」とする文献があります(冨永忠祐著『Q&A再婚の法律相談 離婚・死別からのステップ』日本加除出版124-125頁)。
一方で、戸籍実務を取り扱う役所のホームページを見ると、次のような記載があります。
母(父)が再婚したとき
連れ子がいる母(父)が再婚し、再婚相手の氏を称して戸籍に入籍しても、お子さんは自動的には再婚相手の戸籍には入籍しません。
その子の氏を再婚後の母(父)と同じにし、その戸籍に入籍させるためには入籍届が必要です。
この場合、家庭裁判所の許可が必要です。
母(父)が再婚したとき
連れ子がいる母(父)が再婚し、再婚相手の氏を称して戸籍に入籍しても、お子さんは自動的には再婚相手の戸籍には入籍しません。
その子の氏を再婚後の母(父)と同じにし、その戸籍に入籍させるためには「入籍届」が必要です。
この場合、家庭裁判所の許可が必要です。
母(父)の再婚相手が、子の父(母)であるときは、許可は必要ありません。
では、いずれが正しいのでしょうか。
民法791条を見てみることにしましょう。
第791条
1 子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。
2 父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができる。
3 子が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、前二項の行為をすることができる。
4 前三項の規定により氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から1年以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができる。
この条文を見ればわかるとおり、原則として、子と母の氏が異なる場合に、子の氏を母の氏と同じにするためには家庭裁判所の許可が必要ということになります(民法791条1項)。
しかし、例外的に、民法791条2項が適用される場合には、家庭裁判所の許可なく入籍届を出すことができるという立て付けになっています。
では、再婚相手と子どもが養子縁組はしないけれども、再婚相手の戸籍に子どもを入籍させるというケースに民法791条2項が適用されるかというと・・・
再婚相手と子どもが養子縁組をしない以上、両者に法律上の親子関係はありませんから、子どもにとって母の再婚相手は「父」ではなく、「他人」です。
したがって、子どもから見れば、「他人と母が婚姻している」という状態にすぎず、民法791条2項にいう「父母の婚姻中に限り」という要件をみたしません。
そのため、上記ケースでは、民法791条2項は適用されず、原則どおり、子の氏の変更手続のためには家庭裁判所の許可が必要ということになります。
これが、たとえば、次のような子どもの両親が復縁したという稀なケースであれば民法791条2項が適用されます。
山田A男と鈴木B子が結婚して、B子の姓は山田になった。
その後、山田C子という子どもが生まれたが、A男とB子は離婚し、B子がC子の親権者となった。
その結果、B子は旧姓である鈴木姓に戻り、C子も鈴木姓になった。
ところが、その後A男とB子が復縁して、再婚してB子は再度山田姓になった。
そこで、C子を山田姓に戻すために、C子をA男の戸籍に入籍させたい。
このようなケースであれば、C子から見ればA男は実の父親ですから、「母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合」であり、かつ「父母の婚姻中」ということになり、民法791条2項が適用され、家庭裁判所の許可は不要となります。
先ほど挙げた福井県坂井市のホームページに「母(父)の再婚相手が、子の父(母)であるときは、許可は必要ありません。」とあるのはこのようなケースを指しているわけです。
その他に、民法791条2項が適用される場面としては、ある男性が子どもを認知した後に、その男性と子どもの母が結婚するような場面などがあります。
以上見てきたとおり、再婚相手と子どもが養子縁組はしないけれども、再婚相手の戸籍に子どもを入籍させる場合には、家庭裁判所の許可が必要と捉えて差し支えないと思われます。
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