ブログ
離婚・男女問題
【離婚】離婚後の子どもの氏と戸籍に関する手続
1.はじめに
前回の記事で、離婚後の氏のことと戸籍のことについて説明しました。
では、子どもの氏と戸籍はどうなるのでしょうか?
ここでは説明の便宜上、夫が戸籍の筆頭者となっていて、離婚にあたって妻が子の親権者になるという最も一般的なケースを想定して説明することとします。
現状では男性側の氏を名乗る夫婦が多数派ですが、そのような夫婦が離婚した場合、女性側は原則として自動的に旧姓に戻ることになりますが、婚氏続称の手続をとれば結婚時の氏を名乗り続けることができるということは前回の記事で説明しました。
そして、夫側の氏を名乗っている夫婦が離婚する際に、妻が未成年の子の親権者となった場合、妻だけが戸籍から抜ける形になって、子どもは自動的に妻(母親)の戸籍に入るわけではないということも前回の記事のとおりです。
つまり、何も手続をしなければ子どもはそれまでの戸籍に残ったままで、母と子は別々の戸籍になるということです。
これは妻が婚氏続称の手続をとっていたとしても変わりません。
婚氏続称の手続をするということは、妻の氏はそれまでと変わらないということですから、妻(母親)と子どもは同じ氏ということになりますが、戸籍は別々ということですね。
しかも、ちょっとややこしいのですが、母が婚氏続称の手続をしたことで、母の氏と子の氏がたとえ同じであったとしても、あくまで表記上は同じというだけで法律上の氏は母と子で異なっているのです。
この部分については、一応最後に説明を行いますが、興味のない方は読み飛ばしていただいて大丈夫です。
以上のことから、婚氏続称の手続をしているか否かにかかわらず、子を母の戸籍に入籍させるためには以下の手続が必要になってきます。
2.子どもの戸籍を移すための方法
では、子どもの戸籍を妻(母親)の戸籍に移すためにはどうしたらいいのでしょうか?
前回の記事では車のイメージで説明しましたが、母親が乗っている車に子どもを乗せるためにはどうしたらいいのかということですね。
子どもと母親が同じ戸籍に入るためには、子の氏の変更という手続が必要になります(民法791条、戸籍法98条1項)。
子の氏の変更の手続をするための手順は大きく分けて2つです。
①家庭裁判所と②役所で、それぞれ手続が必要となります。
一つずつ説明していきましょう。
まずは家庭裁判所で子の氏の変更許可の審判の申立てを行って、許可を得る必要があります(家事事件手続法160条)。
審判の申立てとか許可が必要と聞くと、なんだか大変そうとか許可がおりなかったらどうしようと思われるかもしれません。
ですが、裁判所のウェブサイトに書かれているとおりに必要書類を揃えて申立てをすれば、基本的にはあっさり許可がおりますので、心配する必要はありません。
何かわからないことがあれば家庭裁判所に聞けば大丈夫です。
家庭裁判所で子の氏の変更の許可がでたあとは、役所で母の戸籍に入籍する旨の入籍届を出します(戸籍法98条1項)。
こうすることによって、子どもと母親は同一戸籍に入って同じ氏を名乗ることができるということになります。
ちなみに、この入籍届が受理されることで初めて効力が発生しますので、家庭裁判所の許可だけを取って安心して入籍届を忘れてしまっては何の意味もありません。
家庭裁判所で子の氏の変更の許可を得た後はすぐに役所で手続をするということを忘れずにしていただきたいと思います。
3.婚氏続称の手続をしても子どもと氏が違うというのはどういうこと?
先ほど、母が婚氏続称の手続をしたことで、母の氏と子の氏がたとえ同じであったとしても、あくまで表記上は同じというだけで法律上の氏は母と子で異なっていると説明しました。
ここをもう少しだけ詳しく説明しておきます。
たとえば、佐藤さんという男性と鈴木さんという女性が結婚して、この夫婦の姓を佐藤としたとします。
この場合、妻の姓は当然ながら夫の姓である佐藤になります(民法750条)。
そして、この夫婦が離婚することになった場合、妻は旧姓である鈴木姓に戻ることになります(民法767条1項)。
ただし、離婚後3か月以内に婚氏続称の手続をすれば、佐藤姓を名乗り続けることができます(民法767条2項、戸籍法77条の2)。
ここまでは前回の記事でも説明しました。
ただ、婚氏続称の手続をするというのは、あくまで妻が結婚時の姓である佐藤姓を名乗り続けることが「できる」という意味しかなくて、法律上の姓も結婚時の姓のままであり続けるというわけではないんです。
この辺で分からなくなってきたかもしれませんが、民法767条を見てみましょう。
第767条
1 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。
2 前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。
民法767条1項には「離婚によって婚姻前の氏に復する」と書かれていますね。
なお、「協議上の離婚」とありますが、この規定は裁判上の離婚にも準用されています(民法771条)。
そのため、協議離婚であれ裁判所を介した離婚であれ、離婚することによって民法上は問答無用で旧姓に戻るということです。
ただ、第2項に「届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる」とあることから、婚氏続称の手続をすれば、呼称上の姓を結婚時の姓とすることができるということになります。
ということで、いくら婚氏続称の手続をしたとしても、あくまで呼称上の姓を結婚時のままとするという意味しかなく、民法上の姓は旧姓に戻るということになります。
先ほどの例で言うと、妻が婚氏続称の手続をした場合、妻の呼称上の姓は「佐藤」ですが、民法上の姓は「鈴木」ということです。
そのため、母と子の民法上の氏が異なるので、婚氏続称の手続をするしないにかかわらず、子どもを自分の戸籍に入れるためには、子の氏の変更の手続が必要になるというわけです。
☆離婚、親権、養育費・婚姻費用、面会交流、財産分与、慰謝料、年金分割などでお悩みの方は離婚問題に強い弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
弁護士法人千里みなみ法律事務所では離婚問題に力を入れて取り組んでおり、離婚分野は当事務所の得意とする分野の一つです。
多数の解決実績やノウハウを生かして適切なアドバイスを行いますので、お気軽にお問い合わせください。
離婚に関するご相談は初回30分無料で受け付けております。
お問い合わせフォームまたはお電話よりご予約いただきますようお願いいたします。