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離婚・男女問題

【離婚】別居中の子どもの健康保険はどうなる?

2021.08.03

1.はじめに

前回の記事で、別居中の妻の公的医療保険について解説をしました。

 

今回は、別居中の子どもの公的医療保険について考えてみましょう。

 

必ずしも別居中に子どもの公的医療保険を異動させなければならないという意味ではありませんので、そこはご注意ください。

 

 

2.妻の健康保険に子どもを加入させる場合

前回の記事で説明したとおり、妻が働く会社で健康保険の被保険者資格の要件を満たせば、妻は自身の健康保険に加入することになります。

 

このような場合に、一緒に暮らす子どもを妻の健康保険に加入させる(妻の扶養に入れる)ことができるのでしょうか?

 

夫と妻それぞれが健康保険に加入している場合、子どもをどちらの被扶養者とするのかについては次のような基準があります。

 

1 夫婦とも被用者保険の被保険者の場合には、以下の取扱いとする。

(1) 被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、被保険者の年間収入(過去の収入、

現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだものとする。以下同

じ。)が多い方の被扶養者とする。

(2) 夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合は、被扶

養者の地位の安定を図るため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者

とする。

(3) 夫婦の双方又はいずれか一方が共済組合の組合員であって、その者に被扶養者

とすべき者に係る扶養手当又はこれに相当する手当(以下「扶養手当等」という。)

の支給が認定されている場合には、その認定を受けている者の被扶養者として差し

支えない。

なお、扶養手当等の支給が認定されていないことのみを理由に被扶養者として

認定しないことはできない。

(4) 被扶養者として認定しない保険者等は、当該決定に係る通知を発出する。

当該通知には、認定しなかった理由(年間収入の見込み額等)、加入者の標準報

酬月額、届出日及び決定日を記載することが望ましい。

被保険者は当該通知を届出に添えて次に届出を行う保険者等に提出する。

(5) (4)により他保険者等が発出した不認定に係る通知とともに届出を受けた保険

者等は、当該通知に基づいて届出を審査することとし、他保険者等の決定につき疑

義がある場合には、届出を受理した日より5日以内(書類不備の是正を求める期間

及び土日祝日を除く。)に、不認定に係る通知を発出した他保険者等と、いずれの

者の被扶養者とすべきか年間収入の算出根拠を明らかにした上で協議する。

この協議が整わない場合には、初めに届出を受理した保険者等に届出が提出さ

れた日の属する月の標準報酬月額が高い方の被扶養者とする。

標準報酬月額が同額の場合は、被保険者の届出により、主として生計を維持す

る者の被扶養者とする。なお、標準報酬月額に遡及訂正があった結果、上記決定が

覆る場合は、遡及が判明した時点から将来に向かって決定を改める。

(6) 夫婦の年間収入比較に係る添付書類は、保険者判断として差し支えない

 

この基準は昭和60年の基準を廃止して、令和3年8月1日から新たに適用されることになったものです(保保発0430第2号、保国発0430第1号)。

 

色々と書かれていますが、ポイントとなる部分はというと・・・

 

➢被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入 、 将来の収入 等 から今後1年間の収入を見込んだものとする。以下同じ。)が多い方の被扶養者とする。

➢夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合は、被扶養者の地位の安定を図るため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。

 

基本的には夫婦のうち収入の多い方の扶養に入れるということになるわけですね。

 

ということで、原則として、妻の方が夫よりも収入が多い場合には、子どもは妻の扶養に入れるということになります。

 

もっとも、妻の方が収入が少ない場合であっても、長期の別居で世帯を別にするなどの具体的扶養の状況を保険者(健康保険組合など)に話して、子どもを妻の健康保険の被扶養者となれるように交渉してみるという手段もあるとの指摘もあります(『離婚をめぐる相談100問100答〔第二次改訂版〕』256頁)。

 

実際に当事務所が扱ったケースでも妻の方が夫よりも収入が少なかったものの、別居中に子どもを妻の扶養に入れたというケースがありました。

 

ちなみに、妻の健康保険に子どもを加入させるにあたって、子どもが夫の健康保険の被扶養者から外れたことを証明する資格喪失証明書を求められることがありますので、具体的な手続きや必要書類については、妻自身の加入する健康保険組合に尋ねてみてください。

 

 

3.妻の国民健康保険に子どもを加入させる場合

妻を世帯主とする国民健康保険に子どもを加入させるのは、妻と子どもの世帯が同一であれば可能です。

 

したがって、妻と子どもの住民票所在地が同一であれば、妻の国民健康保険に子どもを加入させることができます。

 

ちなみに、もともと子どもが夫の健康保険の被扶養者であった場合には、子どもを妻の国民健康保険に加入させるにあたって、夫の健康保険組合発行の資格喪失証明書が必要となります。

 

 

4.夫の協力が得られない場合

上記のとおり、子どもを妻の扶養に入れたり、妻の国民健康保険に加入させるにあたって、子どもの資格喪失証明書が必要になる場合があり、そのようなときには夫側に書類を用意してもらうことになります。

 

しかし、夫がこれに協力してくれないという場合にどのような取扱いをするのかについては、各保険者(健康保険組合等)の運用に委ねられています。

 

そのため、夫の協力をどうしても得られないというような場合には、保険者に相談してみるといいと思います。

 

以上が別居中の子どもの公的医療保険についての説明でした。

 

前回の記事でも書きましたが、すべてのケースにおいて別居中に妻や子どもの公的医療保険を必ず異動させなければならないというわけではありませんので、その点はご注意ください。

 

むしろ離婚したタイミングで公的医療保険の異動の手続をするというケースの方が多いと思われますので、そこは誤解のないようにしてください。

 

 

 

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