ブログ
離婚・男女問題
【離婚】離婚調停における電話会議システムの上手な活用方法
1.はじめに
前回の記事で、調停に代わる審判という制度を利用すれば、裁判所に出向くことなく離婚を成立させることができるということを説明しました。
これはあくまで調停成立の場面に当事者がどうしても立ち会うことができない場合に「調停に代わる審判」という制度を利用できるということです。
では、当事者が遠方に居住しているなどの理由で、そもそも裁判所に出向くことが難しいケースにおいて、通常の期日(調停が成立するまでの調停期日)はどのように進めればよいのでしょうか。
この点、調停はあくまで当事者双方が出席するのが原則とされています。
ここで、家事事件手続法という法律を見てみましょう。
(家事審判の手続の規定の準用等)
第二百五十八条 第四十一条から第四十三条までの規定は家事調停の手続における参加及び排除について、第四十四条の規定は家事調停の手続における受継について、第五十一条から第五十五条までの規定は家事調停の手続の期日について、第五十六条から第六十二条まで及び第六十四条の規定は家事調停の手続における事実の調査及び証拠調べについて、第六十五条の規定は家事調停の手続における子の意思の把握等について、第七十三条、第七十四条、第七十六条(第一項ただし書を除く。)、第七十七条及び第七十九条の規定は家事調停に関する審判について、第八十一条の規定は家事調停に関する審判以外の裁判について準用する。
2 前項において準用する第六十一条第一項の規定により家事調停の手続における事実の調査の嘱託を受けた裁判所は、相当と認めるときは、裁判所書記官に当該嘱託に係る事実の調査をさせることができる。ただし、嘱託を受けた家庭裁判所が家庭裁判所調査官に当該嘱託に係る事実の調査をさせることを相当と認めるときは、この限りでない。
つまり、家事事件手続法の第51条から第55条の規定は家事調停の手続期日に準用されているということです。
そこで、同法の第51条に目を向けると・・・
(事件の関係人の呼出し)
第五十一条 家庭裁判所は、家事審判の手続の期日に事件の関係人を呼び出すことができる。
2 呼出しを受けた事件の関係人は、家事審判の手続の期日に出頭しなければならない。ただし、やむを得ない事由があるときは、代理人を出頭させることができる。
3 前項の事件の関係人が正当な理由なく出頭しないときは、家庭裁判所は、五万円以下の過料に処する。
したがって、これらの規定により、原則として当事者は調停期日に出頭しなければならないということがわかります。
しかし、現実的には遠方に居住しているなどの理由で調停に出席することが難しいケースがあるということは想像に難くありません。
そこで、家事事件手続法では電話会議システムという制度が利用できるようになりました。
(音声の送受信による通話の方法による手続)
第五十四条 家庭裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、家庭裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、家事審判の手続の期日における手続(証拠調べを除く。)を行うことができる。
2 家事審判の手続の期日に出頭しないで前項の手続に関与した者は、その期日に出頭したものとみなす。
先ほど挙げた家事事件手続法258条1項の準用する上記の同法54条1項によって、「音声の送受信により同時に通話をすることができる方法」つまり電話会議システムが調停手続においても利用することができるということになります。
2.電話会議システムの利用方法
では、具体的にどういった方法で電話会議システムが利用されているのかについて紹介してみたいと思います。
たとえば、東京家庭裁判所で離婚調停が行われることとなり、一方当事者Aは東京に住んでいるが、他方当事者Bは大阪に住んでいるというケースを想定しましょう。
上記のとおり、原則として調停は当事者が出席する必要があるため、Bは大阪から東京に調停期日のたびに行く必要があります。
しかしながら、毎回東京まで行くのは時間も手間もお金もかかってしまうことになります。
もちろん、お金や時間がかかっても直接参加したいという方もおられますので(後述のとおり出席することには相応のメリットもありますので)、ご本人さえよければ東京家裁での調停に毎回出席いただいても全く問題ありません。
一方で、少しでも負担感を減らしたいという場合には、次のような方法が考えられます。
①Bが大阪の弁護士に依頼するパターン
この場合、東京家裁の電話と大阪の弁護士の事務所の電話を繋いで、電話会議システムを利用することになります。
Bは地元である大阪の弁護士の事務所に行けばいいので、東京家裁に毎回行くよりは大幅に負担は減ると思います。
また、代理人弁護士とBは同じ場所にいますので、コミュニケーションを取りながら調停を進めていくことができます。
結果としては東京家庭裁判所に代理人弁護士と一緒に行くのと同じような効果を得ることが可能となります。
②Bが東京の弁護士に依頼するパターン
②-1 この場合、東京の弁護士に一任して、当該弁護士に調停期日に出席してもらえば、交通費や日当は比較的抑えられるのではないかと思います。
ただし、自分の住んでいないエリア(この例でいうと東京)で弁護士を探すのが難しいという側面や弁護士との対面での打ち合わせが難しいという側面がありますので、一長一短といえるでしょう。
さらに、代理人に調停に出席してもらえるメリットがある反面、自分は調停に出席しないため、調停でどのようなやり取りが行われたのかが分からないというのもデメリットといえるかもしれません。
また、東京の弁護士に依頼したうえで、自分は大阪にいながらにして調停に参加したいというご希望の方もおられると思います。
②-2 そのような場合には、代理人弁護士には東京家庭裁判所に出席してもらい、Bは大阪家庭裁判所の一室にて電話会議システムを利用するという方法を取るということができる可能性があります。
もっとも、現実的にはこの方法では代理人弁護士と依頼者が別の場所にいるためコミュニケーションを取りづらく、調停を進めにくくなる可能性があるというデメリットがあるといえます。
実際、当事務所が扱った案件においても、相手方がこの②-2の方法を取っていたことがありましたが、やはり進めにくかったのか途中からは相手方本人も調停に出席するようになったということがありました。
③Bが弁護士に依頼しないパターン
Bが弁護士に依頼せずに、かつ東京に行くことなく大阪で調停を進めたいという場合もあると思います。
この場合は、Bが調停期日当日に最寄りの家庭裁判所(この例でいうと大阪家庭裁判所)に行き、大阪家裁の電話と東京家裁の電話を繋いで、電話会議システムを利用するという運用がとられているようです。
代理人が付いていない場合、ご本人では調停の進め方や主張の仕方がなかなかわからないと思いますが、ただでさえ一人で進めることが難しい調停を、さらに調停委員と顔を合わせることなく電話でのやり取りのみで進めるというのは非常にやりづらいだろうと推測されます。
また、この方法の場合、大阪家裁と東京家裁の両方の日程調整が必要となりますので、調停期日が入りにくくなるというデメリットもあります(これは②-2の方法も同様ですね)。
特に家庭裁判所にある電話会議システム用の電話機の数には限りがあるようですので、期日調整が難しくなる傾向があるかもしれません。
3.電話会議システムのメリット・デメリット
以上のように、当事者が遠方に住んでいる場合には電話会議システムを利用できる場合があります。
最大のメリットは、遠方の裁判所に行くことなく調停を進めることができるという点だと思います。
他方で、デメリットはというと、①電話でのやり取りになるため、会話のキャッチボールがしにくい、②調停委員や家裁調査官の顔が見えないため、微妙なニュアンスがつかみにくい等の点が挙げられます。
このデメリットに関して言うと、調停委員からもこちらの顔が見えず、こちらの話す内容や声色しか手掛かりがないため、「電話会議での調停はやりづらい・・・」という本音を調停委員から聞くこともあります。
このようなデメリットがあるため、要所要所では実際に調停に出席するということもあります。
全く顔を見たこともない人と電話で会話をするのはなかなかコミュニケーションをとりにくいものですが、一度でも会ったことのある人ならだいぶ印象が違ったりすることもあります。
そこで、少なくとも最初の調停には出席するという方法も実務的にはよく使われているのではないかと思います。
4.電話会議システムで調停を成立させることができるか?
電話会議システムにはメリット・デメリットがあるということがお分かりいただけたかと思いますが、ではこの方法を使って調停を成立させることができるのでしょうか。
家事事件手続法には次のような規定があります。
(調停の成立及び効力)
第二百六十八条 調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、確定判決(別表第二に掲げる事項にあっては、確定した第三十九条の規定による審判)と同一の効力を有する。
2 家事調停事件の一部について当事者間に合意が成立したときは、その一部について調停を成立させることができる。手続の併合を命じた数個の家事調停事件中その一について合意が成立したときも、同様とする。
3 離婚又は離縁についての調停事件においては、第二百五十八条第一項において準用する第五十四条第一項に規定する方法によっては、調停を成立させることができない。
4 第一項及び第二項の規定は、第二百七十七条第一項に規定する事項についての調停事件については、適用しない。
上記の家事事件手続法268条3項の規定により、離婚調停や離縁調停の場合は、電話会議システム(第54条1項に規定する方法)では調停を成立させることができないということになります。
そこで、実務的には調停成立までは電話会議システムをうまく利用してコストを抑えつつ、調停成立が見込まれる期日には当事者が裁判所に行くという方法を取るということがよく行われています。
他方で、離婚調停や離縁調停以外の事件、たとえば婚姻費用事件などでは電話会議システムで調停を成立させることができます。
実際、当事務所が扱った案件の中でも、一度も裁判所に行くことなく婚姻費用調停を成立させたということもございます。
どのようなケースで電話会議システムを利用するのか、あるいはどのタイミングで調停に出席した方がいいのか等の判断はなかなか難しいと思います。
遠方の裁判所で調停の申立てを行う場合、電話会議システムの経験豊富な法律事務所にご相談されることをおすすめします。
☆離婚、親権、養育費・婚姻費用、面会交流、財産分与、慰謝料、年金分割などでお悩みの方は離婚問題に強い弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
弁護士法人千里みなみ法律事務所では離婚問題に力を入れて取り組んでおり、離婚分野は当事務所の最も得意とする分野の一つです。
多数の解決実績やノウハウを生かして適切なアドバイスを行いますので、お気軽にお問い合わせください。
離婚に関するご相談は初回30分無料で受け付けております。
お問い合わせフォームまたはお電話よりご予約いただきますようお願いいたします。